老いるタイ

◇老いるタイ◇

昨年度の国連統計によると、アジアの高齢化率(65歳以上人口比率)は、

日本が25%を超えて群を抜いているが、

韓国(13.1%)、シンガポ-ル(11.7%)、

タイ(10.5%)、中国(9.6%)が急速に追い上げている。

専門家は、タイもあと20年余りで現在の日本の水準に達すると見ている。

開発途上国のタイは、低所得で高齢化が進んでおり、

高齢化のスピードは日本を凌ぐ勢いである。


1970年代の人口抑制政策が効果を上げ、

経済発展に伴う女性の社会進出、晩婚、非婚化も重なる。

高齢化率が7%から14%になるのに、フランスは100年以上かかったが、

日本は24年、タイは23年(予測)である。

日本は高齢化の前に先進国入りしたが、

タイは「富む前に老い始めた」。

日本のような医療保険、年金、介護保険制度の整備は、財源的にも時間的にも追いつかない。

公務員、会社員には貯蓄型の年金や社会保険の制度があるが、

貧しい人々が多い農民や自営業、行商といったインフォーマルセクターには、

高齢者給付金しかない。この様な事情はアジアの国々に共通している。

タイでは昨年3月、社会開発.人間安全保障省に初の高齢者専門部局が置かれた。

しかし、「先ず、定年の60歳から65歳への延長に力をいれる」との発表があり、

重点を置くのは、高齢者の収入源確保策にとどまっている。


公的な支援が足りないならば、どうするか?

私達チェンマイ介護研究会では、1月にチェンマイにある、

NGO「老人啓発財団」を訪問したが、元気な高齢者が、

助けを必要とする高齢者を支援する取り組みに力を入れていると言っていた。

人口が都市に集中し、地方では祖父母とか孫が残る「隔世代家庭」が急増中。

故郷に残った人達を生かさなければ、高齢者支援はままならない。

此処の代表は「貧困解消なしの長寿は、貧しくつらい人生の長期化にしかならない」

と指摘する。


都市部への出稼ぎや急激な核家族化が進む中、

伝統的に強かった家族の介護力が低下しており、

要介護高齢者や介護家族を支える社会サービスを早急に整備する必要がある。

しかし、財政面での制約が強く、全国民を対象とした社会保障制度の構築が困難である。

日本など先進国からの支援、協力が期待されるが、

タイ国でも早急に国民がこの実情を認識し、社会保障制度などの改善、家族や

地域など伝統的な相互扶助機能の見直し、その強化を目的とする地方自治体や

NGO、民間組織の活動を期待したい。


一方、富裕層向けには、新たなビジネスも出てきている。

昨年7月、娯楽大手RS社が初の高齢者向けの

専門チャンネル、ブルンTVを開局、健康や医療、趣味などの情報番組を放送している。

貯金、時間的に余裕のある中間層などの高齢者が対象であるが、

情報を通じて社会の眼が高齢者の健康、医療、介護問題に向く一助になることを期待したい。


SCCニュース第8号より





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