シャ二ダールの花

シャ二ダールの花
              
JICA シニアボランティア                 
チェンマイ大学作業療法学科 渡邊 邦夫

太古から高齢者や障害者に対するケアが行われていた証拠のひとつに

「シャ二ダールの花」がある。

イラク北部にあるネアンデルタール人が住んでいた

シャ二ダールの洞窟の中に腕や目に障害のある男性の遺体が葬られていた。

そして遺体の周りの土にはたくさんの花粉が含まれていた。

つまり、ネアンデルタール人は障害をもった人を共同体の一員としてケアし、

亡くなった後にはたくさんの花を捧げて死者を弔ったと考えられている。

その一方で、各地のネアンデルタール人の遺跡から

石のナイフが当たってできた跡がある人の骨がたくさん出て来ている。

これは、肉を剥ぎ取って食べた形跡だと言われている。
 
人間はとても多面的な存在だ。

ケアする面があるだけでなく攻撃的な面もあり、両者を天秤のようにもっている。

日本にもタイにも良質な介護を受けて生活している障害者や高齢者の方がたくさんいる。

その一方、障害者や高齢者に対する虐待が後を絶たない。

例えば、2012年度に日本で虐待と判断された事例は

1万5千件を超えている(平成26年度高齢者白書)。

高齢者のケアを考える時、

「やさしさ」や「思いやり」といった「美徳」だけに寄りかかるのは危険だ。

自分の中にある「残忍さ」や「自分さえよければ」という「悪徳」を素直に認めることが大切だろう。

「ケアをする側」も「ケアを受ける側」もそれぞれ「等身大の自分」をもっている。

もしかすると極端な「美徳」と「悪徳」の間に広がる広大な「普通のくらし」の中に、

さりげなく当たり前に存在する「互いに支え合う関係」を基盤にした「ケア」が大切なのかも知れない。
 
チェンマイに来て、ほぼ2年。

ほどほどに自分らしく老い、安らかな終末を迎えるための

穏やかな「ケア」をつくっていくことができたらいいなあと思っている。

SCCニュース第6号より



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